ドラキュラ・ヴァンパイア・吸血鬼と言えば
- 美女の生き血を啜る
- 日中は棺桶の中で眠っている
- ニンニク・十字架が弱点
などのイメージがありますよね!?
これらのイメージは1897年にイギリスの作家ブラム・ストーカーによって書かれた『ドラキュラ』が元となっています(⊙_⊙')
このドラキュラのモデルとして有名なのが 『串刺し公』として恐れられたヴラド3世という人物でブラム・ストーカーは『ワラキア公国とモルダヴィア公国の物語』の中で彼の記述を目にしてインスパイアされたのです。
しか〜し!!!
ヴラド3世は十字架・ニンニクが嫌いなわけでも日中、棺桶の中で眠っていたわけでもないんですw
実はブラム・ストーカーはヴラド3世とは別にセルビアで起きたある事件に影響されて『ドラキュラ』のストーリーを作っています。
その事件とは『セルビア吸血鬼事件』でドラキュラが実在したとしか思えないような出来事が次々と巻き起こり、村の住民たちは恐怖に慄き、大パニックになったのです!
この記事では『セルビア吸血鬼事件の概要』と『事件の真相』について書いていきますよ〜!!
果たしてドラキュラは本当に実在したのか...?
Contents
セルビア吸血鬼事件の概要①キソロヴァのバンパイア事件
1725年、オーストリアのウィーンで恐怖に満ちた事件が報じられた...
それは原因不明の『連続怪死事件』
事件の舞台となったのはセルビアのキソロヴァという小さな村で『8日間で9人が謎の死を遂げた』というものでした。
また不可解なことに全員が死○間際に”同じことを言っていた”と記録されています。
『10週間前に死○だ男に首を絞められた』と...
つまりウィーンで報じられたのは『死者による連続殺○』が起きたというニュースで人々は今まで感じたことがないような恐怖に包まれたのです。
また新聞には『Vampyri』(ヴァンピーリ)と書かれており、これが吸血鬼を表す『ヴァンパイア』として有名になったようです。
そしてヴァンパイア事件はウィーンを通じて次第に周辺国にも伝わっていき恐怖が連鎖することに...
事件の概要②セルビアのメドヴェギアで起きたヴァンパイア事件
ヴァンパイア事件の中でも特にエグい事件の記録がドイツ・ミューヘンの図書館に存在しており、これはセルビアに駐留していた軍医が上層部への報告のために記録したものです。
その報告書のタイトルは『ヴァンパイアと呼ばれるものについて』でその内容はこのように記されています。
セルビアのメドヴェギアという小さな村で1726年頃、村人4人が連続して原因不明の死を遂げ、死の間際に全員が『アルノルト・パウル襲われた』と言ったのです。
このアルノルト・パウルは1ヶ月程前に荷馬車から転落して急死した人物だったので村人は『パウルはもしかしたらヴァンパイアとなってしまったのではないか?』と考えパウルの墓を掘り起こして確認したのです...
墓を掘り起こした村人は信じられない光景を目の当たりにする!
村人たちの証言によると『死○は腐敗することなく綺麗なまま』だったと。
また『目、鼻、口、耳からは新鮮な血が流れて』おり『手足の古い爪が剥がれ落ちて、新しい爪が生えてきていた』とも証言しているんです(⊙_⊙')
パウルの死○を見た村人たちは『パウルはヴァンパイアになった』と信じ込み、彼らは村を守るには”ヴァンパイアを駆逐するしかない”と考え、パウルの死○の心臓に杭を打ち込んだ。
するとその瞬間、この世のものとは思えないような恐ろしい断末魔が響きわたり、さらなる恐怖を植え付けられた村人たちは4人の犠牲者の死○にも杭を打ち込んだ後に燃やしたのです。
これはヴァンパイアに殺○れた人間はヴァンパイアになるので『灰にすることで伝染を食い止めることができる』と考えたためでした。
これで全てが終わるハズでした。
しかし、死の連鎖は止まることはなくその後、3ヶ月で17人の村人が謎の死を遂げる...
家畜の肉を食べた人間はヴァンパイアになる!?
心臓に杭を打ち込んで死○を灰になるまで燃やしたのにも関わらず死の連鎖が続くので村人たちは次のように考えたのです(⊙_⊙')
『パウルは人間だけでなく家畜も襲っては血を吸っていた』
『その家畜の肉を食べたものはヴァンパイアになって、さらなるヴァンパイアを増殖させている』
これによって
- 隣人
- 家族
- 自分自身
がいつヴァンパイアになってもおかしくないと村中が大パニックに!
そして村人たちは墓地に行き、ヴァンパイアの疑いのある全ての死○の心臓に打ち込み、さらに頭も切○落とした上で焼いて川に流したというのです。
ヴァンパイアの概念がヨーロッパ各地に知れ渡る!
18世紀前半、セルビアで起きた2件のヴァンパイア事件は新聞や関連する出版物によって広まり、ヴァンパイアの概念はヨーロッパ各地に知れ渡ることになりました(⊙_⊙')
そしてヴァンパイアに関しての議論がされるようになります。
当時のヨーロッパの哲学者や医学者は『ヴァンパイアは迷信であり、撲滅すべき』と考えていましたが、神学者たちは『悪魔の仕業』と捉えてヴァンパイアを否定することはなかったようです。
このようにさまざまな議論が交わされて、色々な考え方があった中で確かなのは『ヴァンパイアが当時の人々の生死の価値観を大きく揺さぶった』という点でしょう。
吸血鬼事件は全て医学的に説明可能!?
村人たちが証言した
- 死○は腐敗しておらず綺麗な状態
- 目・鼻・口・耳からは新鮮な血が流れていた
- 手足からは新しい爪が生えていた
- 杭を心臓に打ち込むと断末魔が響き渡った
など。
これらは専門家によると全て医学的に説明がつくようなのです👀
ここからは吸血鬼事件の真相編としてそれぞれの謎を解き明かして見ましょう〆(・∀・@)
死○が腐敗していなかった理由
ヨーロッパでは人が亡くなるった場合は土の中に遺体を埋める土葬が一般的で、パウルも土の中で眠っていたわけです。
そしてこの土の中というのがこの謎を解くためのポイント💡
腐敗は細菌活動によって起こり、そのためには『空気』が必要になるのですがパウルは土の中に埋葬され、空気との接触が少なかったので『腐敗が進んでいなかった』と考えれています。
(野ざらしの状態に比べて土の中では腐敗のスピードは8倍遅いそうです)
村人たちは野ざらしの死○が腐敗することを見ることはあっても墓の中の死○を見たことはなく、また、土の中では腐敗スピードが遅いということも知りませんでした(⊙_⊙')
そのため腐敗していないパウルの亡骸を見て『ヴァンパイア』だと思ったのです。
爪が伸びていた謎
実は人間は心臓が止まっても体のすべての細胞がすぐに活動停止になるわけではないので死後も髪や髭、爪が伸びることがあるようです(⊙_⊙')
実際の解剖でも死後にこれらが伸びていることが度々確認されるようなのでパウルの爪が伸びていたことも説明ができるのです。
新鮮な血液が目・鼻・口・耳から流れていた謎
これは『肺や血管の血液が気管へ染み出し口や鼻から出てきた』と考えられています。
心臓に杭を打つと断末魔を上げた理由とは!?
そして最も気になる断末魔ですが...
これは消化管や肺の中が腐敗によってガスが溜まり、その状態で杭を打ち込んだことでガスが口や鼻に移動。
その際に『気管や声帯などの細かいところをガスが通ったために音が出た』と考えられるようで、実際の解剖で遺体にメスを入れる際に奇妙な音が出ることがあるそうです(⊙_⊙')
このようにパウルの死○に起きたことは現在では医学的に全て説明できるのですが、当時の人々は『死◯が生き返ってヴァンパイアになった』と解釈することでさまざまな事象に対して納得しようとしたのです。
東ヨーロッパだけで『死者の蘇り』が信じられた理由とは!?
東ヨーロッパは西ヨーロッパに比べて『死者の蘇り』つまりヴァンパイア伝説が長きに渡って信じられていました。
どうして西と東で違うのでしょうか?
その理由はキリスト教にあります。
元々『死者の蘇り』という考え方はヨーロッパ各地の土着の信仰として信じられていました。
しかしヨーロッパ中西部ではカトリックが広まったため『死○が蘇る』という発想はなくなっていったのです。
なぜならキリスト教では死後に復活できるのは『イエス・キリスト』だけと信じられているので庶民の死○が蘇るという発想はあり得ないからです。
一方
- ルーマニア
- セルビア
- ブルガリア
などの東ヨーロッパの国々はギリシャ正教が広まった地域。
正教には信仰が広まった地域全体を一括統制する権威が存在せず、またオスマン帝国に支配されていた時代においても土着の宗教に対して寛容だったという背景がありました(⊙_⊙')
そのため土着の信仰『蘇る死者』ヴァンパイアの発想が根強く残り、不可解な出来事に対してヴァンパイアという伝承に基づいて理解したわけです〆(・∀・@)
各地で吸血鬼論争が巻き起こる!
現在でもコロナ論争なるものが日々、繰り広げられていますがw
やはり当時も各地で『吸血鬼論争』が起きたのです。
『死○だ人間の魂は死体に戻りうるのか?』『ヴァンパイアは本当に存在するのか?』など。
これらは説明の出来ない未知の事柄に恐怖を覚え、その結果『吸血鬼論争』が起きたと考えられます。
そのような吸血鬼論争に対してフランスの哲学者・ヴォルテールは次のように述べています。
このようにヴォルテールや思想家たちは新しい時代において吸血鬼などの迷信を信じる人々はナンセンスであると批判したのでした👀
女帝マリア・テリジアがヴァンパイアの正体を明かす!?
ハプスブルグ家の皇帝フランツ1世の皇后であり女帝と呼ばれたマリア・テリジアは東ヨーロッパを治めるためには『ヴァンパイアの正体を明らかにする必要がある』と考えました。
また彼女は自分が治める全ての領地で自分の制定したルールを守らせた人物で、そのルールの中に『異教的な考え』があってはならなかった。
なのでヴァンパイアの正体を是が非でも明かす必要があったのです(⊙_⊙')
マリア・テレジアが調査団を派遣!
1755年、マリア・テレジアはチェコ東部の地方モラヴィアに吸血鬼を解明するための調査団を派遣。
それを指揮したのがマリア・テレジアの侍医であったマリア・テレジアの侍医、ゲラルト・ファン・スウィーテンでした。
調査隊はモラヴィア地方のヴァンパイア伝説が残る村で村人の協力を受けて、実際に墓を掘り起こし、遺○を村の中心に運んだのです。
この時、ヴァンパイアの疑いのある死◯は19体で棺を開けて死○ごとに腐敗の状況を注意深く観察。
そしてこの調査結果をスウィーテンがまとめて世界初の『吸血鬼に関する医学的報告書』が完成したのです。
スウィーテンは報告書に次のようなことを記しています。
と。
スウィーテンが注目したのは!?
スウィーテンは吸血鬼事件で報道されていた
ヴァンパイアが生きている人の呼吸を詰まらせたりすることで人々を不安がらせる
ココに注目して犠牲者の全員が語った『ヴァンパイアが首を締めてきた』という証言を解明しようと試みたのです。
まずスウィーテンは”犠牲者たちの不思議な共通点”を発見して意外な結論を見出しました(⊙_⊙')
実際にヴァンパイアの記録には何らかの病気を暗示する記述が多く、症状の辛さや恐怖からヴァンパイアに苦しめられるという錯覚が起きていた可能性が高いようです。
その証拠に『ヴァンパイアが居て人が死○だ』という記録は多いのですが『ヴァンパイアに噛まれて血を吸われて死○だ』という記録はどこにもないんです👀
また
- コレラ
- ペスト
- 結核
など次々と人が亡くなるような病気に対して『吸血鬼のせいにしていた節がある』ことからスウィーテンの病気説は正しいのではないか!?と思います。
またスウィーテンは『吸血鬼に関する医学的報告書』の中でこのようにも記しています。
スウィーテンの調査報告を受けたマリア・テレジアは1755年に『ヴァンパイア 魔法 魔女など迷信に基づく行為を禁止する』と制定しています。
これにてヴァンパイアは人々の心から消えて恐怖の連鎖が止まるハズでした。
しかしヴァンパイアは再び人々から注目されることに...
文学によって再びヴァンパイアが注目される!
19世紀になると科学の発展し『死◯が蘇る』というような迷信は駆逐されていた時代でした。
しかし、ヴァンパイアは不死鳥の如く復活し、人々から再び注目されることになります(⊙_⊙')
1816年、スイス・ジュネーブのレマン湖ほとりの山荘で5人の男女によるヴァンパイア復活のきっかけとなった集まりがあったのです。
山荘の持ち主は詩人ジョージ・ゴードン・バイロンで彼は数多くの女性と同時に関係を持つようなだらしない男でしたw
当時の文学は幽霊や怪奇現象をテーマにした『ゴシック小説』が流行していたのですが、これはそれまでの啓蒙思想(けいもう)の反動で感情主義の『ロマン主義』が誕生し、恐怖やサスペンスなどを好む風潮が高まっていたためです。
この一夜の怪奇談義によって参加者の1人であるメアリー・シェリーがある作品を書き上げることになります。
その作品は『フランケンシュタイン』で1818年に発表されています。
さらにもう1つの作品が生まれるきっかけとなっています。
バイロンの主治医であり、集会の参加者であったジョン・ポリドリはバイロンをモデルにした作品をのちに発表しており小説のタイトルは...
”THE VAMPYRE『吸血鬼』”なのです!!
THE VAMPYREの概要
画像:Amazon
ロンドンの社交界に現れた謎の魅力を持つ貴族ルスブン卿。
彼に関わった女性は欲望の餌食にされると噂される。
やがて彼が行く先々で吸血鬼事件が発生。
吸血鬼事件の犯人として疑われたルスブン卿も強盗に襲われて旅先で死亡する。
しばらくするとロンドンで死○だはずのルスブン卿が目撃される。
というような話なのですが見た目や性格、女性との愛欲など...
バイロンが完全にモデルとなっているんですw
つまり、ヴァンパイアの最初のモデルはヴラド3世ではなくジョージ・ゴードン・バイロンだったわけですがこの作品をきっかけに人々は再び吸血鬼に注目したんです👀
18世紀では『蘇る死○、そして19世紀では『欲望の吸血鬼族』としてヴァンパイアは復活を遂げたのです。
THE VAMPYREに触発されて次々と作品が生まれる
THE VAMPYREにインスパイアされ、その後ヴァンパイアは小説の世界で進化していきました。
1847年に発表された作品『吸血鬼ヴァーニー』では『吸血鬼に噛まれた者も吸血鬼になる』という18世紀ごろにセルビアの村人が考えていたヴァンパイアの性質が踏襲されています(⊙_⊙')
1872年に発表された『カーミラ』では寝ている女性を襲うのは男ではなく美貌の女吸血鬼なのですが、カーミラでも
- 棺桶で眠る
- 心臓に杭を打たれて死ぬ
というかつてのヴァンパイア像が取り入れられています。
そしてこれらの小説や東ヨーロッパの吸血鬼事件にインスパイアされて誕生したのがブラム・ストーカーの『ドラキュラ』でこの作品によって現在のヴァンパイアのイメージは確立されたと言えるでしょう。
ヴァンパイアは当時の人々が作り上げたフィクションでしたが、小説や映画で現在も人々の心の中に棲みついていることは確かです。
なのでヴァンパイアは間違いなく実在していると言えるのではないでしょうか?
そして!!!
ブラム・ストーカーがドラキュラ伯爵のモデルとしたヴラド3世は↓の記事で書いているので興味がある方はチェックしてみてください〆(・∀・@)