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第6話 階段で誰かが私の足をつかむ!!
静岡県のG病院関係者は2号棟を” 呪われた病棟”と呼んでいる。
2号棟の北の端にある階段で奇怪な手に足を掴まれた医師や看護師が続出したから...
北の端は構造上の関係から1日中薄暗い。
雨の日や曇りの日は特に暗く不気味ささえ感じさせる。
しかし、2号棟の2階と3階の北の端に医師と看護師の更衣室と仮眠室があるためこの階段は関係者によく利用されていた。
ところが現在はこの階段を利用する人はほとんどいない。
その理由は看護師が1階から2階に通じる階段で奇怪な手に足を掴まれて怪我をしたから...
恐怖体験と怪我をした看護師・石原さんの話。
『 夜の6時から勤務でしたので私は更衣室に向かっていました。いつもなら中央の階段かエレベーターを使うのですがその時は考え事をしていて北階段まで来てしまったのです。』
『 足をつかむ手の噂のことを思い出して迷ったのですが1階から2階までなので一気に登ってしまえば大丈夫と思い小走りで階段を駆け上がったのです』
『 あと5〜6段で2階という時でした。 右の足首をギュッと握られて転んでしまったのです。一瞬のことでしたし勢いがついていたので階段の角に額をぶつけてしまいました。』
『 目から火が出るほど痛かったのですがそれよりも足首の方が気になって足元を見ました。』
『 一瞬でしたが赤茶色の細い手が見えていてスッと引っ込みました。 驚いて這うように階段を登ろうとしたのですがまた足首をつかまれました。 その力が強くて下に引きずり落とされそうでした』
『 必死になって階段の角に手をかけて大声で叫びました。すると目の前が暗くなってきて何も見えなくなったのです』
石原さんの足首を掴んだ手の正体は...
すぐに石原さんの叫び声を聞きつけた看護師や患者が駆けつけた。
助け起こされた石原さんは階段の中間にある踊り場までずり落ちていた。
『 何も見えなくなった時、何ていうか”グニャッ”とした生暖かいものに体を包まれたのか分かりました。生暖かいものは波のように動いてまるで生きているかのように体のあちこちを触ってきてそれが1時間以上も続いたような気がしました。』
『 それと一緒に階段を突き抜けて地底の方へ沈んでいく感じがしたので体を動かして必死に逃げようとしました。 でも体が思うように動きませんでした。そのうち息が苦しくなってきました。覚えているのはそこまでです。』
『 気がつくとナースルームのベッドの上でした。その時時計が目に入ったのですが私が大声を上げてから4〜5分しか経ってなかったようです...』
助けに行った看護師によれば、叫び声を聞いてすぐに駆けつけ額から血を流して倒れている石原さんを大急ぎでナースルームに運びベッドに寝かせている。
さらに 寝かせて数秒後に目を覚ましているので全部で3〜4分と経って いなかったはずだという。
『 時間は私の錯覚かもしれません。でも”グニャッ”とした生暖かいものに触れらた感じはとても錯覚とは思えないのです』
『 やはり、噂の女性の霊でしょうか? そうとしか考えられません...。 もしそうならお祓いをしないとまた同じようなことが起こってしまいますよ』
この病院では過去に3階の階段から転げ落ちた女性がいた。拒食症の患者だった。
落ちた時、肋骨が折れて肺炎に刺さり助けを求めたのかどうか誰もそれに気づかなかった。
通り掛かった医師により発見された時は既に手遅れだった。
第7話 窓から覗いた不気味な顔
真佐美さんの母親が真っ青な顔をしてナースルームに飛び込んできた。
『で.....出たんですよ!!真佐美の言っていた顔が窓からこっちを覗いていたんですよ!!!』
手は興奮のためバネ仕掛けのように宙を舞っていた。
『えっ!? 顔だけの幽霊ですか?』
看護師の吉村さんも” 顔の幽霊”を見たことがあった。
笑を見ると針は午前1時5分を指していた。
大分県のB病院の看護師をしている吉村さんは驚くと同時に”これで真佐美さんも先がないかな?”と考えていたという。
『 入院患者さんの中に真佐美さん(当時16歳)という女の子がいました。肝炎と腎不全の合併症でかなり重症でした。』
『小部屋に入っていて1日おきにお母さんが付き添いに来ていました。B病院は安全看護のシステムでしたから、付き添いは認めていませんでしたが末期症状の患者さんには例外として認められていました。』
窓から覗く顔に怯える真佐美さん
夜、ナースコールが鳴った。真佐美さんの部屋からだった。
『 どうしたの?』
『 窓から人が見てるんです』
『 窓から?誰が見てるの?』
『 気持ち悪い顔。こっちを覗いています』
部屋に行ってみると、窓の右側を指差してそこから覗き込んでいたと話した。
しかし窓の外は人が立てるような場所はなかった。
上からロープで降りてくるしか方法はなさそうで部屋に入った時も窓を開けて外を見てもそれらしいものは見えなかった。
真佐美さんは毎晩8時に痛み止めの薬と睡眠薬を飲んでいる。
そのせいで幻覚を見たのだろうと思っていた。
数日後、再び真佐美さんの部屋からナースコールが鳴った。
『 また、あの顔が窓からこっちを見ているんです。早く来て、覗かないように言って下さい』
吉村さんは個室へ向かった。(この日は母親は来ていなかった)
前と同じで窓の外には人などいなかった。
しかし真佐美さんは怯えていた。
そこで吉村さんは窓に向かって演技をした。
『 女の子の部屋を覗かないでください。真佐美さんが怖がるでしょう。あっちへ行ってください』と。
そして少女の枕元に行くと『 もういなくなったわよ』 と声をかけた。
その時だった!
吉村さんは見つめられる視線を感じて振り向いた。
窓の外から、覗き込んでいる顔があった...
吉村さんは反射的に真佐美さんの 体をかばうように身を伏せていたという。
しばらくして、恐る恐る顔を上げると窓の顔は消えていた。
吉村さんの悪い予感が的中する...
『 細い目をした男性の顔でした。全体的に黒っぽくて目だけがギラギラと光っている感じでした。 見えたのは顔だけで体があったのかどうか分かりません。』
『 ホラー映画に出てくるような不気味な顔でした。それで悪い霊だったのではと考えるようになったんです。死霊というか死神というか。 そんな不吉なものの顔じゃないかって...』
『 なので真佐美さんのお母さんがナースルームに飛び込んできた時”きっと真佐美さん 悪いことが起こるのでは”って思ったのです。』
それから数日後、真佐美さんは亡くなった。
吉村さんの悪い予感が的中した...
『以前、 同じ経験をしたことがありました。 夜中に胸が苦しいと言う患者さんがいて、その女性のところに行った時です。』
『真佐美さんの部屋にいた時と同様に”視線”を感じました。 でも、恐ろしくて振り向けませんでした』
この女性は一週間後に亡くなったという。
第8話 昏睡状態の患者がベッドを動かした!?
『 看護師になってもう40年になりますけど、あんな経験をしたのは初めてです。それまで霊というものは信じていなかったけど、やはり人間に理解できないことが起こるんですから、 目に見えない”何か”はあるんですよ』
長野県のM病院に勤務する大橋素子さんの話。
M病院は集中治療室が3階のナースステーションの隣にあり、ここにいる患者は重体で危篤状態が昏睡状態、または大手術をした人。
そんな人たちだから、絶対に自分でベッドから下りるなんて不可能だった。
ところがM病院では時々、不思議なことが起きていた。
『 噂では色々と聞いていました。昏睡状態の人が自分で点滴のスピードを調整したとか、酸素マスクを外していたとか、危篤だった人がベッドの下にある尿瓶を取って用を出していたというのものです』
『 でも、それは噂として聞いていただけで自分の目で確かめたものではありませんでした。しかし、私は実際に体験したのです』
大橋さんの不思議な体験!
『2年前の冬のことでした。朝の10時頃、 ナースステーションにいた私は何気なく隣の集中治療室を見ました。すると先生や看護師に混じって1人の男の人が立っているのが見えたのです』
『 誰かしら?と思ってみたのですが透明のビニールのカーテンにかかっていてよく分かりませんでした。 でも、患者さん用の青い寝間着を着ていることは分かりました。』
『 ”集中治療室に一般の患者さんが入ってきたのだ”と思った私はどうして先生や看護師たちが注意をしないのか不思議でした。』
『 気になった私は男の人の動きをじっと観察していました。男の人はベッドの上のものを下へ動かす動きをしていました。』
『 そしてベッドを押して動かす仕草が見えました。これは大変と思った私はマイクで集中治療室にいた看護師にそれを辞めさせるように伝えたのです。』
『 しかし看護師は不思議そうな顔をしてみるだけで、注意しに行かないのです。 なのでもう一度マイクで伝えました。』
『 その間も男の人の動きを目で追っていました。やはりベッドを動かそうとしてる様子でした。 さらにマイクで伝えると”看護師は何を言ってるの?”という表情をしているだけで立ったままじっとしていました。』
『 私は我慢できなくなって、集中治療室に向かいました。そして、ドアを開けて中に入ったとき男の人の姿が見えないのに気づいたのです。』
『”どうしたの?” と言いながら近寄ってきた看護師に”そこの男の人がベッド動かそうとしてるのよ”と怒鳴りながら男の人がいたベッドのカーテンを開けました。』
『 でも男の人はいませんでした。ベッドの中には昏睡状態の患者さんがいるだけでした。狐に化かされたような心境でした。』
『周りを探しましたがやはりどこにもそんな人はいませんでした。私は見たことを話しました。でも最初は誰も信じてくれませんでした』
『 ところが そのベッドの担当看護師が”誰かベッドに触った?”と尋ねたことから大騒ぎになりました。』
集中治療室に居たのは...
『 誰も触っていなかったはずのベッドが30センチほど上の方に動いていたのです。それに酸素ボンベの位置も動かされていると言いました。調べてみましたが本当に誰もそのベッドに触っていなかったのです。』
『 もっと不思議なことがわかりました。その男の人だけは青い寝間着を着ていましたが他の人たちは全員裸だったのです。
『 集中治療室の中で青い寝間着を着ていたのはその男の人以外はいなかったのに私は動いている男の人をカーテン越しに見ています。』
『 それからしばらくして、その男の人は昏睡状態から覚めることなく亡くなっています。』
『 私は今でもその男の人が自分でベッドを動かしたらと思っています。なぜベッドを動かしたかわかりません。でもこれは本当にあったことなのです』
第9話 死んだ患者が嫌がらせする
『 私たちは冷蔵庫に変化があるたびにきっとHさんの霊が怒っているのだと話し合っていました。どんな人だってこの話を聞けば怨霊となって現れても仕方がないと認めてくれると思いますよ。』
『 そんな悲惨な事件が私たちの病院で起こっていたんです』
神奈川県にあるY病院の堀江看護師の話。
『 病院も一般社会も人間関係は同じで病院の方が世界が狭いのでもっと割が悪いかもしれませんね...』
『 私のいる内科病棟にOさんという60代の女性がいました。 とにかく我儘な人で自分の思うように事が運ばないと我慢ができなかったようです。』
『 甲状腺が悪くて入院していたので病気のせいもあったと思います。長男のお嫁さんなど病院に来るたび嫌みを言われて泣いていることがしばしば。 そんな人ですから内科中の人から嫌われていました。』
『口うるさい人でしたから他の患者さんたちはOさんには逆らえずに適当に付き合っているようでした。』
『 そんな患者さんの中にとても正義感の強いHさんという中年女性がいました。Hさんは 高血圧で入院していた方です。』
『 そんな2人が炊事場で口論になりました。 炊事場には共同冷蔵庫がありその中の入れ方が気に食わないからとOさんがHさんを呼び出して文句を言ったそうです』
『 その日は一応収まりましたがそれからが大変でした。 何かにつけてHさんの気に障ることばかりするようになったのです。』
『Hさんはそれらのことを無視していましたがどうにも腹にすえかねてようで、 再び冷蔵庫の中身のことで口論になりました。』
『 その時Oさんは冷蔵庫にあったHさんの物を取り出し、 投げつけたり足で踏みつけたりしました。そして口汚く罵ってたのです。』
『 あまりの酷さに 私たちが中に入った時でした。Hさんが倒れたのです。 高血圧だったHさんは脳出血を起こしていました。』
『Hさんが倒れた時Oさんは”いい気味よ”と 勝ち誇ったように炊事室から出てきました。』
『 それから2日後、Hさんは亡くなりました』
『 俺が原因でますますOさんはみんなから嫌われました。それが気に食わないOさんはさらに我儘になっていきました。』
Hさんの仕返し
『それから数日経ってからです。今度はOさんが倒れました。』
『 冷蔵庫を開けようとした時、冷蔵庫が倒れてきてOさんは下敷きになってしまったのです。肋骨折る重傷でした。』
『 ウインドウの管理が悪いということになり、私たちも上司から注意をされました。 しかし、私たちはHさんの霊がOさんに仕返しをしたのだと話していました。』
『それからもOさんの周りで不思議なことが起こりました。Oさんの枕元にあったラジオが火を吹いたり、車椅子に乗ろうとしたOさんが転倒して腰の骨にヒビが入ったこともあります。』
『 またベッドから下りようとした時、足がシーツに引っかかって頭から転倒したことや冷蔵庫のドアが急に開いたことがあって中からOさんの物だけが転げ出たことがありました。』
『これにはOさんも ショックを受けたようです。』
『Oさんは退院の手続きをすると別の病院に移ったのです。Oさんが居なくなるとHさんの霊も鎮まったらしく、 不思議な事は起こらなくなりました』
第10話 危険を知らせるナースコール
『 うちの病院には患者さんと私たちを助けてくれる何かがいます。 私たち看護師は”コールさん” と呼んで感謝しているんです』
栃木県のE病院に勤務する大川麗子さんの話。
『最初に”コール”さんを 知ったのは5年ほど前でした。』
『 夜中の2時ごろナースコールが鳴りました。当直の看護師さんの氏家さんが”どうしました?”とマイクで尋ねても返事がなかったので病室に飛んでいくと患者さんが呼吸困難になっていたそうです。』
『 すぐに手当てをしたので大事には至らなくて済みました。』
『 その時は氏家さんは患者さんがナースコールのボタンを押したとばかり思っていたそうです。でも元気になった患者さんから”どうして来てくれたのか?”と訊かれて患者さんが押してないことがわかりました。』
『” 奇妙なこともあるのね”などと話していました。 そのことがあって、半月ほど経った日の夕方でした。』
『 201号室の患者さんからナースコールがあり、 私がいたのですぐにマイクで用件を訊くと、返事がなかったので201号室へ行ってみました。』
『 患者さんは多いいびきをかいていました。脳溢血特有のいびきなので大至急手術室に運びどうにか助かりました。もう少し遅れていたら手遅れだったと思います。』
『 この時も患者さんはナースコールのボタンを押してませんでした。不思議だと話題になっていた時にまた同じようなことが起こりました。』
『 最初は気味が悪くてナースコールが鳴るとドキッとしましたが何かが患者さんを助けてくれるんだと思ったら怖いどころか感謝するようになりました。』
『誰かが”コールさん”と言ったので、それから私たちはそう呼ぶようになりました。私たちはコールさんをうちの病院の守り神だと信じています。』